第24章 いとほし日々[中編]
「ん?あー、気になる?僕の“目”」
「はい」
「実はさ、僕の“目”には……」と五条は勿体ぶるようにたっぷりの間をとってから。
「八重って映ってないんだよねー。いや、普通に目では見えるよ?でも、六眼でってなると全っ然見えない!」
たっはーと笑いながらいつも以上に軽いノリで言ったと思えば、すぐにトーンが少し落ちる。
「だから、こうして見に来ないといけない。ホント、面倒だよね」
「…ご面倒をおかけして申し訳ありません」
五条の声色の変化をネガティブなものと受け取った八重もそれの倍くらい声色を沈めた。
「いや、そういう意味じゃないんだけど。ホント、八重って自罰的っていうか、自己肯定感低いっていうかさー。何?大昔の教育の賜物なの?僕、そういうの嫌いだな」
五条のジェットコースターのようなトークにはついて行くのがやっとの八重であったが、遂には振り落とされたように「はぁ…」と気の抜けた返事になってしまった。
「ま、いいけど。とにかく、八重を心配してるのは何も悠仁や僕だけじゃないってこと自覚してよ。それをさ、『申し訳ない』しか感じてないわけじゃないでしょ」
「……」
「まー、さ、また明日になったらどうせいつも通りに働くんでしょ?みんなに言う第一声が『申し訳ありませんでした』だけなんてはやめろよ」
「…はい」
「はい、よーし。んじゃ、『お大事に』」
なんだか明日までのやっかいな宿題を出されたようで、八重は盛大な溜息をついた。
廊下の離れたところから「八重、聞こえてるよ」って声が飛んできて、もう一度大きく吸った息を吐き出すのを堪えて布団に戻り、布団の中で思う存分に息を吐いた。