第4章 天元様
天元はそう言いながら八重を見ると、既に理解が追いついていないようで目を回していた。
「ハハハ。ちょっと今の八重には難しすぎたようだね。では、不老不死と八重が使ったとする力について話をしよう。自分の力を知っておくことは重要だからね」
「はい、お願いします」
「私の場合、不死ではあるが不老ではないとは言ったね。それは時間の流れに身を置いているということだ。しかし、不老不死となれば話は違う。時間の流れの外側にいると思っていい。もしくは時間そのものの拒絶、自分に起る事象の拒絶といったところだろう」
八重はまた難しい顔をしている。
「簡単に言えば八重に流れるはずの時間が止まっている。怪我などをしてもすぐ治るのは怪我をする前に戻されている、ということだよ」
八重は一生懸命理解しようとしているようなので、天元はそのまま続けた。
「あとは八重の村に起こった現象だが、あれも事象の拒絶と考えると納得がいく。村人全員の老化の拒絶、とでも言えるかな。老化のみ拒絶したため、そのままの姿で寿命を全うしたんだろう」
「では、私が死も拒絶すれば皆は私と同じ不老不死になっていたのでしょうか?」
「いや、それはそう簡単な問題じゃないはずだ。大きな力には必ず代償が伴うものさ。八重は村人に力を使った後に何かしらの変化はなかったかい?」
「え、と…気がつくと波の音が聞こえています。あと、目を閉じると海が見えます」
「海の神…ワダツミ…綿津見神か。しかし、時間となると時量師神という見方も…」
ブツブツ言う天元。
「とにかく、先の力を使った一件で八重は海に捕捉されたと考えるのがしっくりくる。力を使えば使うほど海に引かれるぞ」
「最後はどうなるのでしょうか?」
「さあな。ただ人ではいられないだろうな」
「っ!」
「それだけ神懸かった力だということだ、心しておいた方がいい」
天元はそこまで言うと湯呑みに残っていた茶を一気に飲み干した。
「今日はここまでにしよう。何にせよしばらくここにいるのだから、一緒に過ごしてみれば分かることもあるかもしれないしね」