第24章 いとほし日々[中編]
数日後。
夜が明けた頃からジワジワと八重の胸には違和感が沸き上がり始める。
その感覚に(あぁ、また来てしまった)と八重は毎回諦めにも似た感情になる。
今日は満月の日であると。
波が寄せるように迫ってくる。
潮が満ちるように流れ込んでくる。
そんな海の気配。
この日だけは、八重は自分の感情に流される。
場合によっては泣かされる。
それは1000年前から変わらない。
なので、八重はこの日ばかりは人とは関わらず、自分の殻に籠もり、自らの感情が流れ出ないようにする。
朝早いが新田の元を訪れ、今日は体調が優れないのでいつもの仕事ができないと謝罪する。
むしろ普段が働き過ぎだと新田は快く了承し気遣ってくれた。
部屋に戻り、寝床で布団をかぶる。
今は脹相との繋がりもあるため、そちらの感覚も絞らなければならない。
意識を内へ内へと向け、外からの刺激を閉め出す。
そうなると、浮き彫りになるのは自分の中にあるものだけだった。
(あぁ、今日はいつもの仕事ができなくて申し訳ないな)
(食事の準備は大丈夫だろうか?)
(洗濯物が溜まっているのではないか?)
(もしかしたら、私なんていなくても案外やっていけているのかもしれない…)
『お前はいつ休むんだ?』
先日の脹相の声が蘇る。
(どうしてあんなこと言ってきたのだろう…)
休んでいる暇などある訳がないのに。
『…今日だけじゃないだろう?朝から晩まで…一日中…』
(いつも見ているのだろうか?)
この前はそんなことまで考え及ばなかった。
『……悠仁が、お前のことを気にしていた。心配をかけるな』
(あの言葉は本当に悠仁くんのものだったんだろうか?)
この前、タイミングを見て、虎杖には「心配をおかけしました」と詫びた。
虎杖が一瞬不思議そうな顔をしたのがひっかかっていた。
もしも、あの言葉が虎杖のものでないとしたら――
いや、そんなことはない、あるはずがない、と八重は自分の中で芽生えそうになる思考に蓋をする。
もし、そんなことがあったとしたら、八重はきっと――
そんな時だった。
部屋のドアがノックされる音がした。