第24章 いとほし日々[中編]
「昨日みたいな素の声、嫌いじゃないんだけどなー」
昨日、八重に五条の正体が明かされた瞬間の声を言っているだろう。
八重にとっても自分らしからぬ声だったと自覚がある様で少しだけ恥ずかしそうに俯く。
「その節は大変申し訳ありませんでした」
「あはは、いいのいいの。ホント、キレイにハマってくれて笑えたから」
五条は洗濯かごから洗濯物を取り出すと、パンパンと皺を伸ばして干し始めた。
それに気付いた八重は「あっ」と言って止めようとしたが、五条は手でそれを止める。
「いいのいいの。君の邪魔しに来たわけじゃないんだから。それに邪魔してたなんて知れたら僕が怒られるでしょ」
そう話しながらも早々に1枚干し終える。
皺はきちんと伸ばされ、八重に負けず劣らず綺麗に干されている。
「お上手ですね!」
「まぁ、やらないだけでやれば大抵何でもできちゃうんだよね、僕。惚れる?」
「はい!需要はあると思います!」
「かー。そんな易易と消費されていい人間じゃないんだけどねー、僕」
「ふふふ。そうですね、何て言っても『最強』ですからね」
「そうそう」
八重が破顔したところで五条も満足そうに口角を上げる。
もう一枚、洗濯物を手に取る。
「あ、そうそう。昨日、彼も良い反応だったよねー、あの九相図」
何の気なしに話を続ける五条の横で八重の手が止まった。
そして真面目な顔を五条に向ける。
「…脹相です」
小さく呟くような八重の声に五条は「ん?」と聞き返す。
「九相図じゃありません。彼は脹相です」
今度はきっぱりした声でそう言うと、自分の声の圧に出した本人が驚いたようで次の瞬間には「あ、すみません」と謝りを入れていた。
五条は手にする洗濯物の方に顔を向けながら、弧に細めた目で八重を見る。
「そうそう、脹相って名前だった。彼、渋谷で戦った時より随分丸くなっちゃってさー。見違えちゃったよ」
そして、笑った目のまま八重に顔を向ける。
「あれ、君のおかげ?」
八重は「へ?」とぽかんとした顔をしてから少し考える。
「いえ、そう感じるのでしたらそれは悠仁くんのおかげです。脹相は、お兄ちゃんをやっている時が一番活き活きしてますから」
「へー。ま、そう言うことにしとくよ」