第23章 いとほし日々[前編]
昼間からパーティの準備を手伝ってくれていた人物が五条悟だとわかった時、八重はかなり驚かされたし、封印を解きに行ったメンバーも五条が先に戻ってきていたことに驚いていて、サプライズするつもりが逆にサプライズされてしまうという事態に陥った。
しかし、それでも渋谷の一件からの重い雰囲気は和み、皆に笑顔が戻った時間でもあった。
また明日からは次に控える決戦に向けた対策や訓練が始まる。
しかし、八重にとって、たとえ束の間の穏やかな一時であってもとても胸が温まる思いで彼らを見ていた。
だから後片付けも八重が一手に引き受けた。
先程まで行われたパーティを思えば、食堂のテーブルに置かれた皿ですら愛おしいく、片付けてしまうのも惜しく感じる。
そんなことを考えながら大きな盆に食器類を乗せていく。
そんな最中、ふと気配を感じる。
もちろん八重が感じることができる気配など決まっている。
「脹相、どうしました?」
そちらを振り返りながら話しかける。
彼の人は食堂の出入口にしかめっ面で立っている。
そういえばパーティの間もずっと怖い顔で五条を睨んでいた。
(渋谷で五条さんと戦ったと言っていたし、まだ気にしているのかな…?)
八重の言葉には返事もせず、ツカツカと八重の元までくると何も言わずに食器を盆に乗せ始めた。
「え、あの、脹相?」
脹相は慣れていないのか、それとも機嫌が悪いためか、食器を盆に乗せる力が強くガチャガチャと音を立てるので八重は食器が欠けてしまわないか気が気でなかった。
「脹相、あの、私がやりますから…!」
八重の声が少し高ぶってしまったのを聞いて、ようやく脹相は八重を見た。
その視線もやっぱり不機嫌そうで、八重は脹相が何をしたいのかさっぱりわからなくなってしまった。
「…あまり乱暴に扱うとお皿が欠けてしまいますから…私がやりますので…」
そう言って脹相が手をかけていた皿をやんわりと取り上げて盆に乗せた。
その様子を脹相は無言で見つめていた。
盆がいっぱいになり八重が持ち上げようと手をかけると、今度は脹相が盆の柄に手を伸ばした。
「運ぶ。こんなに乗っていては重いだろう」
確かに少し欲張って乗せすぎた盆は八重が運ぶには重すぎたので素直に頼った。