第23章 いとほし日々[前編]
一応、最初だからと新田が洗い場の設備を紹介してくれた。
一通り説明を聞いた八重は愕然としていた。
「お皿洗い…それだけでよいのですか…?」
高専の洗い場には業務用の食洗機が備わっているので、食べてすぐの食器であれば少しすすいでケースに立てかけ、レバーを下ろしてフタをすれば勝手に洗ってくれる。
洗い終わったものはしばらく置いて乾かしてからしまうらしい。
「いやー、全員分となるとかなりの量ッスよ?」
苦笑いする新田に八重は難しい顔をしている。
「すみません…これ以外の仕事もやらせてほしいのですが…例えば掃除や洗濯など…」
神妙な面持ちでそう言う八重に。
「え、マジッスか?」
新田のこの「マジッスか?」は嬉しい誤算というニュアンスがあったので八重も少し安心した。
そして、掃除や洗濯についても教えてもらう。
八重としては食器洗いの時と同じ衝撃を受けていた。
掃除は箒や塵取は必要なく掃除機がゴミを集めてくれる。
洗濯はボタン一つで終わったら干すだけときた。
いや、乾燥機にかければ干すことすらいらない。
「……150年の進化が、素晴らしいですね…」
「え?なんか言ったッスか?」
「いえ、なんでもありません」
呆然としている八重に新田が申し訳なさそうな顔をする。
「すみません、こんなに沢山はこなせないッスよね?補助監督の方でもやりますんで…」
八重の呆然の意味を履き違えている新田が八重の仕事を奪いにかかる前に、「いえ、大丈夫です。このくらいなら私一人でも」と引き留める。
「いやいや、一人でやる量じゃないッスよ!?」
「本当に大丈夫ですので。もし新田さんから見て、私の力量が及んでないと思ったら、その時は外してください」
大真面目に返す八重に新田も困ったように「わかったッス。でも、無理だけはしないでくださいね!」と最終的には折れてくれた。
こうしてしばらくの居場所を手に入れた八重は3食の食事、片付け、昼間は洗濯・掃除。
皆が寝静まった後は大浴場やシャワー室の清掃まで行った。
文字通りの朝から晩まで働いた。
そうすることしかできなかった。
それで笑ってくれる人がいるなら、そうすることしかできなかった。