第22章 【脹相】繋縛
地下室へ降りる階段を降りると待ち構えていたように八重が立っていた。
「お早うございます…」
そう言って不出来に微笑む八重の姿を見た途端、脹相の胸にグッと差し込むような痛みが走る。
(?……〝繋がり〟か…?)
確かに先程から八重から流れてくる感情は悲しみとも苦しみとも取れるような脹相にはなかなか理解が難しいものだった。
しかし、それくらいしかこの胸の痛みの説明がつくものがない。
今自分がどんな顔をしているかはわからないが、八重はすぐに出来損なった笑みすらもやめて、後には沈んだ色の瞳だけになってしまった。
薄暗い部屋の中でそれは泣いているようにも見えて、脹相は思わず八重の頬に触れて確かめずにはいられなかった。
八重は特に嫌がる素振りもなく相変わらずの瞳で脹相を見つめ返してくる。
「痛みは?」と尋ねれば、「もう、ありません」とだけ返すので「そうか」と触れている手を離してソファに向かった。
目の前でチカチカ光るテレビを見ながら呼吸をすれば、空気に八重の匂いが溶けている。
きっと天元の言いつけを守って、2週間近くもの間、この薄暗い地下室に閉じこもっていたのだろう。
独り、音を消したテレビを灯しながら過ごしていたのかと思うと再び先程の差し込むような痛みがした。
それから逃げるように未だにこちらに来ない八重に座るように言う。
八重はソファの横に来ると少し考えてから脹相から一番遠い端の方に座った。
脹相としては避けられたようで若干の不満はある。
しばらく音のない映像を見てはいたが、ただの時計代わりと聞いて、この部屋で唯一の外部情報も邪魔に感じてテレビの電源は切った。
そうすると画面はソファに座る二人を反射する。
実際に座っていると不満に思うほど遠く感じるのに、テレビに映る二人は脹相が感じているよりも近くに座っているようにも見える。
「…昨日、『話をする』と言ったな?」
「……はい」
「何の話だ」
「……あなたのお聞きになりたいことを…」
脹相が全てを知っていると知らない八重はやはり全ては語ろうとはしないのだと察した脹相は、全てを知っていると打ち明けるべきか、それとも八重がどこまで語るのか様子を見るべきか迷った。
そして結局、後者を選んでしまった。