第22章 【脹相】繋縛
羂索と対峙した時だってそうだった。
「……天元はどこにいる?」
薨星宮直上で相見えた羂索は一言目に言った。
脹相がそれに返すや否や。
「アレと一緒ではないのか?」
ニヤリと笑う羂索が言う『アレ』が八重であることは即座にわかった。
この問いには肯定も否定も正解ではないと脹相は理解している。
「『アレ』とはなんだ。訳が分からんことを言うな」
白を切る。
羂索は「ふーん。ま、いっか」と特別食い下がってくる訳でもなく、その余裕が余計に不気味だった。
以前、「アレは世界がどう変革しようともそのままで有り続けるだろうから、手に入れるのはそれからでいい」と言っていたのは本心で、死滅回游後にでもゆっくり手に入れればいいと思っているというのが現実味を増す。
(……やはりこいつはここで殺さねば…)
八重を羂索の手から守るにはそれしかないと再確認する。
戦い始めてからも。
「君達には期待していただけに失望が大きいんだ。八百比丘尼を釣るための撒き餌にもならなかったようだし」
溜息混じりに言う羂索に、自分と八重がもう無関係と印象付けられた安堵と羂索の中で未だに消えない八重への執着への危機感、そしてやはり自らの命に替える価値があると確信していた。
していたはずなのに、命を賭けようとした瞬間に地面が崩れ、結界の外へと落とされた。
天元に「何故…」と問いかけても答えはなかった。
九十九は「生きろ、今度は〝人〟として」と遺した。
いや、違う。
(思い出せ…目を背けるな)
最後、結界の外に落ちきる瞬間、九十九は笑っていたように思う。
何かを言っていた。
脹相は記憶の中で耳を澄ます。
九十九の口元を凝視する。
『八重ちゃんを頼んだよ』
九十九の最期の言葉を理解した瞬間、息が止まった。
(……九十九、お前も…!)