第3章 鋼の心と、優しい掌【鬼滅/子鉄夢】
「……そんなんじゃ、またすぐ死にかけますよ。少しは自分の身を案じたらどうなんですか」
刀鍛冶の里、夕暮れ時の作業場。
毒舌とともに差し出されたのは、少し苦い野草のお茶だった。
あたし―― は、戦闘訓練でボロボロになった体を休め、目の前の小さな少年に苦笑いした。
「ごめんね、子鉄くん。でも、強くなりたいんだよ」
「ふん、強くなる前に壊れたら意味ないでしょ。あんたは……あんたは、僕が認めた数少ない剣士なんだから」
子鉄くんはプイッと横を向くけれど、その耳は少しだけ赤くなっている。
彼は先祖が作った戦闘用絡繰「縁壱零式」を守り、あたしの過酷な修行にずっと付き合ってくれていた。
ある日のこと。
あたしは山での修行中、不注意で崖から転落し、足を挫いてしまう。
這い上がることもできず、冷え込む夜の森で心細さに震えていた時。
「!! どこだ!! 返事しろ!!」
必死な声が響いた。現れたのは、小さな体に大きな提灯を抱え、必死に走り回る子鉄くんだった。
あたしを見つけるなり、彼は安堵でその場にへたり込み、それからボロボロと大粒の涙を流した。
「馬鹿……! 大馬鹿! 連絡もなく遅いから、もう死んだかと思ったんだからな!」
「子鉄くん、ごめん……助けに来てくれたの?」
彼は返事もせず、小さな背中をあたしの前に差し出した。
「……乗れよ。里まで運んでやる」
「えっ、でも子鉄くんには重いよ……」
「いいから! 鍛冶師をなめるな、力はあるんだ!」
細い肩に掴まると、彼が一生懸命踏ん張っているのが伝わってきた。
一歩、また一歩。
「……あんたがいないと、誰があの絡繰を動かすんだよ。誰が僕の飯を美味いって食べるんだよ」
「子鉄くん……」
「だから……もう二度と、あんな無茶はするな」
背中から伝わる、熱い体温。
里の灯りが見えてくる頃、あたしは彼の背中で、不器用だけど真っ直ぐな優しさに包まれていた。
この小さな背中を守るために、あたしはもっともっと強くなろう――。
鋼よりも固い約束を、心に刻みながら。
*