第2章 霞の少年と、隠された真実【番外編/無一郎夢】
あの日以来、無一郎くんの視線はあからさまに変わった。
以前のような冷たい警戒心ではなく、どこか熱を帯びた、追いかけるような視線。
そんな彼が、ひょっこりとあたしの前に現れた。
「……ねえ、。次の任務、お館様に頼んで合同にしてもらったから」
「えっ? 合同任務?」
「そう。君の戦い方は、僕の霞の呼吸と相性がいい。……それだけじゃないけど」
最後の方は少しだけ声を濁して、彼はあたしの袖をくいっと引いた。
「行くよ。準備して」
有無を言わせない強引さ。
でも、その繋がれた手のひらからは、彼自身の緊張が伝わってくるようで、あたしの胸も小さく跳ねた。
任務は順調だった。あたしが無一郎くんの死角を埋め、彼が鮮やかに鬼を討つ。
「……やっぱり、君といると戦いやすい」
無事に任務を終え、二人で宿屋へ向かう道すがら、彼がぽつりと呟いた。
ちょうどその時、季節外れの強い雨が降り出した。
「わっ、すごい雨……! 無一郎くん、こっち!」
あたしたちは近くの東屋に駆け込んだ。
けれど、二人の肩はすっかり濡れてしまっている。
「……寒い?」
無一郎くんが顔を覗き込んできた。
「少しだけ。でも大丈夫、すぐ止むと思うし」
そう強がったあたしの肩を、彼の手が力強く引き寄せた。
「……こうすれば、暖かいでしょ」
気づけば、あたしは彼の胸の中に収まっていた。
無一郎の細い腕が、あたしの腰をぎゅっと抱きしめる。
「む、無一郎……くん!?」
「静かにして。君の鼓動が、僕のまで伝わってきて……うるさい」
そう言う彼の耳たぶは、夕焼けよりも赤く染まっていた。
雨音だけが響く静寂の中。
彼の髪から漂う爽やかな香りと、重なる体温。
「。僕、君のこと……他人だなんて、もう思えないんだ」
あたしの胸に顔を埋めたまま、彼は消え入りそうな声で囁いた。
「ずっと、こうしていたい。……ダメかな?」
見上げると、そこには霞の晴れた、まっすぐな愛しさを湛えた瞳があった。
*