第11章 (続)聖者の熱、ヒーローの独占欲【ヒロアカ/出久夢】
「……出久くん、怒ってる?」
放課後、誰もいない準備室。
無理やり連れてこられた私を、出久くんは壁際へと追い詰めた。
今日の昼休み、中庭であたしは爆豪くんと話をしていた。幼馴染同士の彼らならよくある光景だけど、あたしと爆豪くんが笑い合っている姿は、出久くんの目には「地獄」のように映ったらしい。
「怒ってなんて……ないよ。ただ、悲しくなったんだ」
出久くんが、あたしの頬をそっとなぞる。その指先はわずかに震えていて、冷たい。
「かっちゃんは、僕が持っていないものを全部持ってる。……でも、さんだけは、僕のものだと思ってたのに」
「違うよ、あれはただの……っ!」
言い訳を遮るように、彼の唇が乱暴に重なった。
昨日のキスとは違う。それは、自分の所有権を必死に主張するような、息もできないほどに深い、渇いたキス。
「ん、っ……ぁ、いず……っ」
「黙ってて。……今日はずっと、僕のことだけ考えて」
出久くんはあたしの両手首を頭の上で片手で掴み、もう片方の手で隊服のボタンを一つずつ、けれど確実な手つきで外していく。
露わになった肌に、放課後の赤い西日が差し込む。
「かっちゃんに見せたの? こんな顔」
「見せてない、っ……ひゃん!」
首筋に、昨日の痕をなぞるように熱い舌が這う。
彼はそのまま、あたしの鎖骨に深く、昨日よりもずっと濃い紫色の痕を刻みつけた。
「……消さないでね。明日、みんなに見せつけるんだ。君が誰のものか、一目でわかるように」
いつもは「みんなを救うヒーロー」の瞳が、今はあたし一人を「閉じ込める」ための檻のように暗く、熱く、歪んでいる。
そのギャップに、あたしの体は拒絶するどころか、抗えないほどの熱を帯びて疼き始めた。
「ねえ、さん。……僕に、全部頂戴?」
出久くんの膝があたしの足の間に割り込み、逃げ場を完全に塞ぐ。
彼はあたしの耳元で、壊れ物を扱うような優しさと、全てを蹂躙するような強引さが混ざり合った、低い声で囁いた。
「君を、僕なしではいられない身体にしてあげる」
それは、聖者の仮面を脱ぎ捨てた、一人の「男」の宣戦布告だった。
窓の外でカラスが鳴く中、準備室には二人の重い呼吸と、甘い、けれどどこか毒を孕んだ執着の匂いが満ちていった。
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