第9章 【後半】偽りの残照:檻の中の無一郎【鬼滅/無一郎夢】
真っ赤になって硬直する私をよそに、師匠の視線は私の腕へと落ちた。
幾重にも巻かれた包帯を見据え、彼はゆっくりと手を伸ばす。
「外してもいい?」
頷くしかなかった。細い指先が器用に布を解いていく。
現れたのは、無数の浅い傷跡。自分を傷つけ、鬼に捧げた惨めな証。
師匠の睫毛が震え、熱い吐息が零れた。
そして、ためらいなく顔を寄せ――その傷痕に、唇を落とした。
「……っ!」
「上書きしなきゃね」
囁きながら、彼は一度だけ唇を離した。だが、その瞳は獲物を逃さない獣のように私を据えている。
「いやっ……汚いから、やめて……っ」
逃れようとする腕を、彼はあっさりとねじ伏せ、床に固定した。
「だめだよ。ちゃんと見てて。僕が君に、何をしているか」
温かな舌が、傷口を慈しむように、そして蹂躙するように這う。
その間も、彼は一度も目を逸らさない。生温かい感触が脈打つたびに、私の全身の神経が痺れ、焼かれていく。
「僕の形をしていたとはいえ、鬼に惑わされた君への……罰だから」
再び涙が溢れ出した。それは悲しみではなく、あまりに強烈な支配への快楽。
そんな私を見て、師匠は愛おしそうに目を細めた。
「さっきも思ってたけど。君って、泣き顔も可愛いね」
淡い瞳に宿る、逃れられない独占欲。
私は悟った。檻の中にいたのは鬼ではなかった。
今日から始まるこの「罰」こそが、私の本当の檻なのだと。
【完】