第9章 【後半】偽りの残照:檻の中の無一郎【鬼滅/無一郎夢】
その一言が、肺の奥を直接掴み、握り潰した。
何が起きたのか、理解するより先に魂が悟った。
力が抜け、私はその場に手をつく。額を床に押し付け、震える肩から零れたのは、言葉ですらない嗚咽だった。
鬼を匿い、血を与え、鬼殺隊を――何より、師を裏切った。
この罪を思えば、今この場で首を跳ねられても文句は言えない。
「ごめんなさい……っ! 私……師匠を、裏切って……っ」
静まり返った夜に、規則正しい足音が近づいてくる。
地を踏みしめる微かな音が鼓動よりも重く響き、やがて彼の影が、私を底なしの闇のように覆い尽くした。
「ねえ、どうして鬼を匿っていたの?」
問いはどこまでも静かで、だからこそ胸を深く抉る。答えられない。声を漏らせば、私の醜い内側がすべて露呈してしまう。
「僕に化けた?」
思いもよらぬ指摘に、心臓が跳ね上がった。否定しなければと思うのに、喉が引き攣れて声が出ない。
沈黙。それは必死の抵抗のつもりだった。
けれど、その沈黙こそが、最も饒舌な肯定となって彼に届いてしまった。
師匠はしばらく私を見下ろし、それから小さく、深い息を吐いた。
そして――。
「泣かないで」
不意に、頭上から柔らかな声が降りてきた。
驚いて顔を上げると、淡い瞳が真っ直ぐに私を射抜いている。
「ねえ、なんで僕に言わなかったの。僕の見た目をしているから斬れないのは、まだ分かる。でも、相談することはできたよね。いつから隠してたの?」
返す言葉がない。涙に濡れた唇が震える。これ以上、軽蔑されたくない。
「……ごめんなさい……もう、しませんから……」
けれど、師匠は小さく首を振った。
「謝罪はあとでいい。今、説明して」
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