第7章 【前半】偽りの残照:檻の中の無一郎【鬼滅/無一郎夢】
「お帰り。今日も頑張ってて偉いね」
蔵の奥、冷え切った空気の中から聞こえた声に、足が止まった。
低くも透き通った声音、淡々とした口調。けれどそこには、本物の彼が決して見せることのない、微かな笑みの響きが混じっている。
振り向けば、木漏れ日の届かない檻の中に、彼が座っていた。
姿も声も、私の師であり、あこがれ続けた人――時透無一郎、そのものだ。
「刃こぼれが増えてる。任務、大変だったんだね」
檻の中の無一郎くんは私の肩口をみやり、慈しむように言葉をかける。
そんな労わりを、本物の師から聞いたことは一度もない。
必要最小限の指導。それが、冷たくも正しい私と彼の師弟関係だった。
「少しは僕に甘えてほしいな」
分かっている、これは偽物だ。
だが、偽物だからこそ、彼は私が喉から手が出るほど欲しかった言葉を、惜しげもなく差し出す。
「……別に、大丈夫です」
私は短く答え、任務でついた傷を隠すように手早く包帯を巻き直した。
だが、その無骨な仕草すらも、檻の中の瞳に熱心に見つめられている気がして、肌が粟立つ。
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