第6章 爆殺王のお見舞いは、唐辛子の匂い?【ヒロアカ/爆轟夢】
「ほら、食え。冷めねぇうちにさっさと詰め込め」
「これ……お粥?」
「あぁ!? 文句あんのか! 栄養バランス考えて作ったんだよ。残したら殺すからな」
タッパーの蓋を開けると、ふわりと出汁のいい香りが広がった。
一口食べると、驚くほど優しい味がする。煮込み加減も、喉越しも完璧。この男、本当に料理だけは繊細なんだから。
「……美味しい。かっちゃん、これ作ったの?」
「……るせぇ。つーか、顔赤いぞ。まだ熱あんだろ」
そう言うなり、彼はゴツゴツとした大きな掌を、あたしの額にパサッと乗せた。
冷んやりとしていて気持ちいい。
「ひゃ……っ!」
「動くなっつーの。……ちっ、まだ熱いな。お前、普段からフラフラしてっからこうなるんだわ」
毒づきながらも、掌を離そうとしない。
むしろ、心配そうに眉間にシワを寄せ、じっとあたしの顔を覗き込んでくる。その至近距離の赤い瞳に、あたしの心臓は風邪の熱とは別の意味で跳ね上がった。
「あの、かっちゃん……。忙しいのに、ありがとう」
「……礼なんか求めてねぇ。お前がいつまでも寝込んでたら、誰をからかえばいいか分かんねぇだろーが」
彼はバッと顔を背けた。耳の先まで真っ赤になっているのを、あたしは見逃さなかった。
「あ、耳、赤いよ?」
「気のせいだろーが!! 黙って食え!!」
怒鳴りながらも、彼は空になったタッパーを奪い取るように回収し、「明日来なかったらマジで爆破しに行くからな!」と捨て台詞を残して部屋を飛び出していった。
バタン、と景気良く閉まったドア。
残された部屋には、彼が持ってきたお粥の温かさと、ほんの少しの火薬の匂い。
「……もう。素直じゃないんだから」
あたしは布団に潜り込み、さっきまでおでこに乗っていた彼の掌の感触を思い出しながら、少しだけ下がった熱に安堵して目を閉じた。
(きっと、明日にはなおる。そんな自信が沸いてきた)
【完】