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『はつこい』

第13章 『 負けられない理由 』


――ブザーが鳴った瞬間。

ボールはリングに吸い込まれ、
体育館が一瞬静まり返ったあと、爆発したような歓声に包まれた。

「っしゃああ!!」

チームメイトに背中を叩かれながら、
凛人は荒く息を吐く。

(……入った)

ギリギリの体勢。
ほとんど感覚だけで放ったシュートだった。

けれど。

(聞こえたんだよな)

あの瞬間、確かに。

――『先輩!かっこいいから大丈夫!負けないー!』

普段、あんな大きな声を出さないはずの声。

凛人は無意識に観客席を見上げる。

人の波の中で、
必死に立ち上がってこちらを見ている小さな姿を見つけた。

咲だった。

安堵したように、少しだけ目を潤ませながら拍手している。

(……ほんと、お前さ)

思わず、口元が緩む。

「凛人ー!ヒーローインタビューだぞ!」

「今行く」

そう返しながらも、
もう一度だけ観客席を見る。

咲は、もう座ってしまっていたけれど、
まだこちらを見ていて――

目が合った瞬間、
少し照れたみたいに笑った。

(……負けられない理由)

さっきまで曖昧だった言葉が、
はっきりと形になる。

(ちゃんと、勝ち続けねぇとな)

その小さな笑顔を見失わないように、
凛人はゆっくりと視線を前に戻した。
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