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『はつこい』

第13章 『 負けられない理由 』


ヒーローインタビュー用のマイクを向けられ、
まだ少し息の整わないまま凛人は軽く汗を拭いた。

「ナイスシュートでした!最後の一本、どんな気持ちで打ちましたか?」

「……そうですね」

一瞬だけ視線を観客席へ向け、
すぐに前を向き直る。

「好きな子から、御守りみたいな言葉をもらったので。
それで頑張れました。――負けることはないです。」

会場が「おおー」と少しざわつく。

横で聞いていたチームメイトが
「誰だよそれ!」と小声で笑い、
さらに空気が和む。

すると、後ろから肩を組むようにして
蓮がひょいっとマイクに顔を出した。

「すいませーん、こいつ今日たぶん最強なんで(笑)」

「おい余計なこと言うな」

「いやマジで。
さっきから目が“絶対決める顔”してたんで」

周りが笑いに包まれる中、
凛人は少しだけ呆れたように息を吐く。

インタビュアーに軽く頭を下げた。

「すみません。――行かなきゃいけないところ、あるんで。」

そう言ってマイクを返し、
迷いなく観客席のほうへ歩き出す。

ざわつく人の間を抜け、
まっすぐ一人の姿を見つける。

――咲。

少し驚いたような顔で立っている彼女の前に立ち、
凛人は何も言わず手を差し出した。

「……行こ」

「え、先輩……?」

戸惑いながらも手を重ねた瞬間、
凛人はそのまま軽く引き寄せる。

人目の少ない通路まで連れていき、
ようやく足を止めた。

「……さっきの、聞こえてた?」

「……はい」

小さくうなずく咲を見て、
凛人は少しだけ照れたように笑う。

「……あの声、マジで助かった。
 あれなかったら、たぶん一本前で折れてた」

そう言いながら、
そっと頭を引き寄せて抱きしめる。

「ありがとな。――俺、勝てた」
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