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『はつこい』

第13章 『 負けられない理由 』


試合はそのまま、拮抗したまま終盤へ入った。

残り時間、あと数十秒。
スコアはわずかに相手がリードしている。

会場の空気が、少しずつ重くなっていく。

(くそ……)

凛人は額の汗をぬぐいながら、ボールを受け取った。
ディフェンスが二人、前に立つ。

時間は、もうほとんど残っていない。

(ここで決めるしかない)

一歩踏み出した瞬間、観客席から声が聞こえた。

「先輩!」

一瞬、体が止まる。

普段、大きな声を出さない咲の声。

「先輩!かっこいいから大丈夫!負けないー!」

必死に叫んでいるその姿が、視界の端に映る。

「……っ」

胸の奥で、何かが一気にほどけた。

(くっそ…泣きそー…。)

凛人は小さく笑う。

「……負けるわけねーだろっ!」

強く踏み込み、ディフェンスの横を抜ける。
残り時間、数秒。

ジャンプ。

放たれたボールが、高い弧を描く。

ブザーが鳴る。
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