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『はつこい』

第13章 『 負けられない理由 』


試合 当日。

調子はいい。
大丈夫。

試合開始のブザーが鳴り、体育館の空気が一気に張り詰める。

観客席のざわめき、シューズが床を擦る音、ボールの弾む音。
すべてがいつもより鮮明に聞こえた。

(落ち着け)

凛人は軽く息を吐き、パスを受ける。
ドライブに入ろうとした瞬間、相手ディフェンスが一歩早く反応した。

ボールを弾かれる。

「っ……!」

床に転がったボールを相手に奪われ、そのまま速攻。
得点板の数字が動く。

会場がわずかにざわついた。

(今の、取られるかよ)

小さく舌打ちしながらポジションに戻る。

「切り替えろ!」

蓮の声がコートに響いた。

「まだ始まったばっかだ!」

「……分かってる」

そう答えながらも、指先に残る感触がわずかに重い。

(ミスんな。今日だけは)

ベンチ横の観客席が、ふと視界に入る。
そこに、見慣れた姿を見つけた。

咲だ。

手をぎゅっと握りしめ、真剣な顔でコートを見ている。

(……見てる)

一瞬だけ、胸の奥の音が強くなる。

(負けられない)

ボールが再び回ってくる。
凛人はゆっくり構え直した。
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