第13章 『 負けられない理由 』
☆ 凛人 視点 ☆
夜の公園は、昼よりもずっと静かだった。
ボールが地面に弾む音だけが、やけに大きく響く。
「……久しぶりだな」
小さくつぶやきながら、凛人はドリブルを続ける。
街灯の下、影が長く伸びていた。
ここに来ると、どうしても思い出す。
バスケを辞めようか、本気で迷っていたあの頃。
最後のつもりで、一人でボールをついていた夜。
――「大丈夫!お兄さんかっこいいもん!負けない!」
不意に、あの小さな声が頭の中によみがえる。
「あの頃か……」
ボールを軽く回しながら、ふっと笑った。
「俺の初恋」
リングを見上げる。
「初めて、本気で好きになった恋」
ゆっくり息を吐き、ボールを構える。
(あの時は、ただの子どもの言葉だったのに)
それでも、不思議とずっと残っている。
(今は違う)
待たせている人がいる。
ちゃんと、約束をしに行かなきゃいけない人がいる。
「……負けられない」
ボールを強く床に打ちつけ、もう一度シュート体勢に入る。
(待っててくれって、言ったんだ)
だから――
「絶対、勝つ」