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『はつこい』

第13章 『 負けられない理由 』


体育館の練習が一段落した休憩。

自販機の前で飲み物を選んでいた咲の横に、ふっと影が落ちた。

「何飲む?」

顔を上げると、凛人が立っている。

「え、あ…大丈夫です、自分で――」

言い終わる前に、凛人はボタンを押してしまった。
落ちてきたペットボトルを取り出し、そのまま咲に渡す。

「はい」

「……ありがとうございます」

少し近い距離に、咲はわずかに視線を泳がせる。

「先輩、最近ちょっと距離近いです…」

「そう?」

「もう、名前で呼ばないの?」

まったく気にしていないような顔で言われ、咲はさらに赤くなった。

「体調、大丈夫なんですか?」

「もう平気。むしろ調子いい」

そう言いながら、凛人は軽く咲の頭をぽん、と触れる。

「心配かけたな」

「……しました」

小さな声で返す咲を見て、凛人は少しだけ目を細めた。

その様子を、少し離れた場所から見ていた蓮が、吹き出す。

「ははっ、なにあれ」

桜が首をかしげる。

「どうしたの?」

「いや、分かりやすすぎだろ、あいつ」

ボールを指で回しながら、くすっと笑う。

「完全に吹っ切れてんな」

視線の先では、まだ何か話している二人。
咲が照れて視線を落とし、凛人が少しだけ楽しそうに笑っている。

蓮は肩をすくめた。

「……まぁいいか。あの顔なら、試合も大丈夫そうだな」
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