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『はつこい』

第12章 『"待つ" 時間も幸せ』


玄関で靴を履きながら、咲は少しだけ振り返った。

「先輩、本当に今日は休んでくださいね」

「ああ、分かってる」

「練習、行ったりしないでください」

念押しするような口調に、凛人は小さく笑う。

「行かねぇよ。ちゃんと休む」

「……約束です」

「約束」

短く指切りの真似をすると、咲は少しだけ安心したように息をついた。

ドアの外では、蓮が壁にもたれてスマホをいじっている。

「ほら、行くぞー」

「は、はーい」

一歩外に出かけた咲が、もう一度だけ振り向く。

その瞬間、凛人が小さく声をかけた。

「……咲」

振り向いたその一瞬――
凛人は軽く身をかがめ、そっと額にキスを落とす。

「ありがと、昨日」

「…っ」

一気に顔を赤くして固まる咲に、凛人は小さく笑って、

「しーっ」

指を口元に当て、内緒のポーズ。

ちょうど外で待っていた蓮が、その様子をちらっと見て小さくつぶやいた。

(……わかりやす。)

一瞬固まり、それから小さく笑った。

「はい。早く元気になってくださいね」

ドアが静かに閉まり、足音が遠ざかっていく。

凛人はそのまま玄関に立ったまま、小さく息を吐いた。

「……よし」

部屋に戻りながら、ぽつりとつぶやく。

「試合、絶対勝つ」
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