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『はつこい』

第12章 『"待つ" 時間も幸せ』


照れたままの凛人は、繋いだ手を離さずに小さく息を吐いた。

「……ちょっと、眠くなってきた」

「横になってください」

咲がそう言うと、凛人は素直にベッドに体を預ける。

「咲、もう少しだけそこ居て」

「はい」

ベッドの端に座ったまま、咲は繋いだ手を見つめる。
さっきまで熱かった手が、少しだけ落ち着いてきているのが分かった。

「……先輩」

「んー?」

「ちゃんと、元気になってくださいね」

「……咲が居るから大丈夫」

ぼんやりした声。

数分もしないうちに、凛人の呼吸がゆっくりと整っていく。

その様子を見ていた咲も、少しだけ体をベッドに預けた。

「……私も、ちょっとだけ」

握ったままの手のぬくもりが心地よくて、
気づけば、二人ともそのまま眠りに落ちていた。


______

夜中、ふっと目が覚める。

「……ん」

ぼんやりした視界のまま体を起こし、凛人は状況を思い出して一瞬固まった。

「……あ」

隣で、椅子にもたれたまま眠っている咲。
繋いだままの手。

「やば……」

慌ててスマホを手に取ると、画面には蓮からの通知がいくつも並んでいた。

『帰ったか?』
『熱どーだ?』
『おい既読つけろ』
『まさかそのまま倒れてねぇよな?』
『……咲、ちゃんと帰したよな?』

『今回だけ許す。』
『手は出すな。』
『はよ、元気になれ』

「……怒ってるな、これ」

小さく苦笑しながら、メッセージ欄を開く。

少し考えてから、短く一言だけ打った。

『ごめん。』

送信ボタンを押すと、スマホを静かに置く。

それから、起こさないようにそっと咲の肩に手を回した。

「……風邪ひく」

小さくつぶやきながら、ゆっくりと体を支え、ベッドへ横に寝かせる。
毛布をかけ直し、髪が顔にかからないように軽く整えた。

「……ありがとな」

聞こえないくらいの声でそう言い、凛人もそのまま隣に横になる。

繋いだままの手を、もう一度軽く握り直して――
二人は再び、静かな眠りに落ちていった。
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