第12章 『"待つ" 時間も幸せ』
ベッドの上で体を起こしたまま、凛人は少しだけ苦笑した。
「咲ちゃん〜、弱ってる男の家にノコノコ来ちゃダメだよ?」
からかうような声。けれど、どこか力が抜けている。
咲はじっと凛人を見て、小さく眉を寄せた。
「…凛人先輩だからに決まってるでしょ。」
その即答に、凛人は一瞬だけ目を細める。
「……他の人のとこ行ってもいいんですか…?」
少し拗ねたような声。
凛人は間を置かずに答えた。
「……無理。ぶん殴るかも、そいつ。」
「…ふふ、先輩、物騒。」
咲は小さく笑い、ベッドの横に置かれていた凛人の手をそっと取る。
「その手は、私と繋いでください…」
弱って少し熱い手が、ぎこちなく握り返してくる。
「……ありがと」
低く小さな声。
いつもより素直で、少しだけ甘い響きだった。
咲はそのまま、繋いだ手を見つめながら小さく息を吸う。
「先輩」
少しだけ身を乗り出し――。