第12章 『"待つ" 時間も幸せ』
自分の部屋のベッドに座り、咲はサメのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。
水族館で凛人に似ているぬいぐるみを見つけて先輩がサプライズで買ってくれた。
「……ほんと、そっくり」
少し強気そうな目元。
どこか不器用そうな口元。
指でそっとぬいぐるみの頬をなぞりながら、小さくつぶやく。
「待つって、決めたのに」
寂しいわけじゃない。
約束してくれた言葉は、ちゃんと心の中にある。
――好き。待ってて。
その言葉を思い出すだけで、胸が少し温かくなるのに。
「……会いたいな、先輩」
サメをもう一度ぎゅっと抱きしめ、枕に顔をうずめる。
「……あと、ちょっとだけ」
小さく目を閉じると、胸の奥に残るのは寂しさよりも、
“待っている時間さえ好き”だと思ってしまう自分の気持ちだった。