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『はつこい』

第11章 『 "音"と名前のない関係 』


蓮からの電話。

『もしも〜し』
「…なんだよ、こんな時間に」
『お、出た出た。起きてたか?』
「寝るとこ」
『嘘つけ〜 どうせ咲のこと考えてたんだろ〜笑』
「…切るぞ」

クスッと笑う声が向こうから聞こえた。

『半分図星と…笑』
『そんなお前にマジで寝れなくなること教えてあげよ〜か?』

「…なんだよ。」

咲の真似をしながら
『…しあわせ』

「…はぁ?切るぞ」

『咲が 「先輩が私の事 考えてくれるのが…しあわせ」ってさ』
『待ってるのも辛くないってさ〜』
『あれ〜 凛人くーん もしも〜し笑』

「……聞こえてる。」

少し低い声で返したあと、凛人は無意識に天井を見上げた。

『あれ、反応薄くない?もっとさ、「マジか」とかさ〜』

「……お前、ほんと余計なこと言うよな」

『いやいや、親友として大事な情報提供だろ?』

「誰が頼んだ」

そう言いながらも、スマホを持つ手の力が少しだけ強くなる。

頭の中に浮かぶのは、咲の顔だった。
抱きしめたとき、キスしそうになったとき、少し驚いたように目を丸くして、それでも――離れなかった。

『で?どうなんですか凛人くん。今どんな気持ち?』

「……別に」

『絶対ニヤけてるな今』

「してねぇ」

即答したものの、電話の向こうで蓮が吹き出した。

『はい嘘〜。長年の付き合いなめんなよ』

「……うるせぇな」

少し間が空く。

凛人は、小さく息を吐いてからぽつりと漏らした。

「……あいつさ」

『ん?』

「そんなこと言ってたの、マジ?」

『マジ。ちゃんと報告してくれるから俺らの妹。』

その言葉に、凛人は一瞬黙る。

胸の奥が、じわっと熱くなる。

「……そっか」

『お、素直』

「うるさい」

少しだけ笑ってから、凛人はスマホを耳に押し当てたまま目を閉じた。

「……じゃあ俺、明日もうちょい頑張るわ」

『なにをだよ』

「……いろいろ」

『はは、意味深〜。まぁいいや。』
『じゃ、おやすみ』

通話が切れる。

静かになった部屋で、凛人はしばらくスマホを見つめたあと、小さく呟いた。

「……しあわせ、か」

少しだけ照れたように目を伏せて、

「……俺の方だろ、それ」

誰もいない部屋で、ほんの少しだけ笑った。

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