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『はつこい』

第11章 『 "音"と名前のない関係 』


夜の岩田家リビング。
ソファに並んで座りながら、咲は少し照れたように膝の上で指を絡めていた。

「……先輩から、“待っててほしい”って言われた。」

双子の二人が同時にこちらを見る。

「あと……好きって、言ってくれた。」

少しだけ頬を赤くして、小さく笑う。

「嬉しかった……でも、私、“私も好きです”って言うの、忘れてて……先輩がちゃんと言ってくれたのに……」

その言葉に、桜がふっと笑った。

「咲〜、待つの、辛くない?」

咲は少しだけ考えて、それから首を横に振る。

「ううん。だって、先輩のこと気になって、高校入るまでも……先輩がいる高校に行きたいって思いながら、ずっと待ってたし。」

少し照れながら続ける。

「そのあと、いっぱい一緒にいられるし……辛くないよ。」

そして、少しだけ視線を落として、小さく言った。

「……先輩が、私のことを考えてくれてるのが……しあわせ。」

一瞬、リビングが静かになる。

次の瞬間、桜が大きく息を吐いた。

「……えー、なにこの子。可愛すぎ。」

蓮も苦笑しながら頷く。

「ほんと。凛人に聞かせたいわ。」

「いや、聞かせたらあいつぶっ倒れるな。」

「それな。」

二人は顔を見合わせて、にやっと笑う。

「……やっぱ成瀬に渡したくなくなる。」

「やめろ、余計ややこしくなる。」

そんな軽口を言い合う双子の横で、
咲は少し恥ずかしそうに「もう……」と小さく笑っていた。
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