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『はつこい』

第10章 『鳴り止まぬ雨音』


玄関で靴を履こうとしたとき。

「凛人」

後ろから、低い声。

振り向くと、蓮がドア枠にもたれたまま立っていた。
さっきまでの軽い表情じゃない。

「……なんだよ」

蓮は少しだけ目を細める。

「俺が部屋にいなかったら、どーしてた?」

一瞬、言葉に詰まる。

昨夜、ソファで眠った咲の顔が頭に浮かんだ。
腕の中の温もりも、そのまま。

「……何もしねぇよ」

そう答えると、蓮は小さく息を吐いた。

「ならいいけど」

そして、静かに続ける。

「余裕なくなって中途半端なことして、咲泣かせるくらいならさ」

蓮はまっすぐ凛人を見たまま言う。

「早く告って、ちゃんと付き合え」

数秒の沈黙。

凛人
「……簡単に言うな」

「簡単だろ。好きなんだから」

そう言ったあと、ふっと表情を崩す。

「お兄ちゃんからの忠告でした☆」
「ま、応援はしてる」

ドアノブに手をかけながら、ニヤッと笑った。

「次は俺のために家来るんじゃなくてさ――」

少し肩越しに振り返る。

「彼女とイチャイチャするために来るんだろうな〜」

「……お前な」

「楽しみにしてるわ」

べーってしながら言う蓮に
凛人は小さく舌打ちしながらも、
完全には否定できず視線を逸らした。
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