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『はつこい』

第10章 『鳴り止まぬ雨音』


しばらくして――

「……ん……」

小さく動いたのは、咲だった。

まぶたがゆっくり開いて、ぼんやりとした視線のまま数秒止まる。
まだ状況が分かっていない顔。

「……あれ……?」

少し体を動かそうとして、ふと気づく。

頬に触れている温もり。
背中に回された腕。
すぐ近くから聞こえる、心臓の音。

一瞬、思考が止まり――

「……え?」

顔を上げた先に、凛人。

さらに横を見ると、
腕を組んでニコニコしている桜と、
笑いをこらえている蓮。

「え、え、え……!?」

一気に顔が赤くなる。

「な、なんで……っ」

慌てて離れようとして、ソファの端で少しバランスを崩しそうになるのを、
凛人が反射的に軽く支えた。

「……大丈夫?」

その一言でさらに真っ赤になる。

「す、すみません! 私、もしかして……」

「昨日、雷すごかったからな」

蓮が横から口を挟む。

「凛人にしがみついて、そのまま爆睡」

「れ、蓮!!」

桜が例の写真を見ながら、まだニコニコしたままゆっくり口を開く。

「へぇー……うちの妹、そんな顔して寝るんだ」

「ち、違っ……!」

咲は完全にパニック状態で、
視線をどこに向けていいか分からず下を向く。

その様子を見て、凛人は小さく息を吐いた。

「……俺が勝手に離れなかっただけだから」

「え……」

「起こすの、かわいそうだったし」

一瞬、静かになる。

咲の耳まで赤くなった。

蓮が小声で桜に囁く。

「ほら、早く帰ってきて正解だろ?」

「うん、最高。さすが蓮」

凛人
「聞こえてんだけど」

からかう笑い声の中、
咲はまだ顔を隠すように俯いたまま、小さく呟いた。

「……ありがとうございます」

その声が、思っていたよりずっと可愛く聞こえて、
凛人は思わず視線を逸らした。
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