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『はつこい』

第10章 『鳴り止まぬ雨音』


朝。

カーテンの隙間から入る光で、凛人は目を覚ました。

腕の中に、まだ温もりがある。

(……あ)

昨夜と同じ姿勢のまま、
咲が胸元に顔を寄せて眠っていた。

そっと腕を動かそうとした瞬間、

「おはよー」

低い声。

振り向くと、スマホを構えた蓮。

カシャッ。

「……お前な」

蓮は画面を確認しながら、ニヤニヤ笑う。

「よく耐えたね(笑)」

「あとで覚えとけよ……」

声を落として返すと、蓮は肩をすくめる。

「昨日の雷、結構やばかったんだよ。
 咲、ああなるの分かってたからさ」

一瞬だけ、からかいじゃない目になる。

「ありがと」

そう言ったあと、すぐまたいつもの顔に戻った。

そのやり取りの間も、
凛人の腕の中で、咲はまだ気持ちよさそうに眠っていた。

外では、ようやく雨が弱まり始めていた。

玄関のドアが勢いよく開く音がした。

「ただいまー!」

バタバタと足音が近づく。

(…やべぇ)

「咲、雷大丈夫だった? 昨日ニュースで――」

リビングに入ってきた桜は、そこで言葉を止めた。

ソファ。

そこに、凛人の腕の中で無防備に眠る咲。

そして固まる凛人。

「……成瀬」

低い声。

「なにしてんの?」

にこにこ笑っているのに、
ゆっくりと握られていく拳。

凛人は慌てて声を落とす。

「いや、違っ……これは、その……雷で――」

「ふーん?」

さらに一歩近づいてくる。

「うちの妹、随分安心した顔で寝てるけど?」

「だから誤解だって」

横で見ていた蓮が、肩を揺らして笑いをこらえる。

「いやー、俺もさっき同じリアクションしたわ」

「お前も止めろよ!」

「無理無理。面白すぎる」

双子はしばらく凛人を見下ろしていたが、
ふっと小さく息を吐いた。

「……まあ、咲が泣いてなかったならいいけど」

そう言いながらも、もう一度拳を軽く握り、

「あとで詳しく聞かせて、成瀬」

凛人
「……はい」
「…さーせんした。」

その返事に、蓮がついに吹き出した。

その騒ぎの中でも、
咲だけは何も知らないまま、まだ静かな寝息を立てていた。
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