第10章 『鳴り止まぬ雨音』
「あ……」
小さく目が合う。
「……まだ起きてたの?」
「ちょっと、寝れなくて……」
その瞬間、空が光った。
ドン、と遅れて響く大きな音。
咲の肩がびくっと揺れた。
次の瞬間、凛人の袖が、そっと掴まれる。
「……雷、むり?」
咲は少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らしながら、小さく頷いた。
「昔から、ちょっと……」
「そっか」
そう言った直後、もう一度、今度はさらに大きな雷。
「こわい……」
今度は袖だけじゃなく、腕にしがみついてくる。
(……近いって)
柔らかい髪が肩に触れる。
ほのかにシャンプーの香りがして、心臓が変な速さで跳ねる。
小さく、思わず口から漏れた。
「……かわいい」
「え?」
「いや、なんでもない」
そのとき、三度目の雷が鳴った。
今までで一番近い、強い音。
「ウワッ 近かったな。」
咲はびくっとして、反射的に凛人の胸元へ顔を押しつける。
「……いや……」
(落ち着け、俺)
動揺を抑えるように、そっと背中に手を回す。
抱き寄せるつもりはなかったのに、
離すこともできず、そのまま軽く支える形になる。
「……大丈夫」
「俺がいるから。」
そう小さく声をかけると、
咲の震えが少しずつ落ち着いていくのが分かった。
雨音が、静かに部屋を満たす。
しばらくして、胸元から小さな寝息が聞こえた。
(……寝た?)
視線を落とすと、安心しきった表情で眠っている。
(これ、動けねぇ)
無理に離すのも起こしてしまいそうで、
結局そのままソファに体を預けた。
雨は、まだ止まない。