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『はつこい』

第10章 『鳴り止まぬ雨音』


窓の外で、ぽつ、と音がした。

「あ、降ってきた」

咲がカーテンの隙間から空を見上げる。
最初は小さかった雨粒は、数分もしないうちに勢いを増し、
やがて屋根を叩くような音へと変わった。

「うわ、これやばくね?」

蓮がスマホの天気を確認する。

「警報出るレベルっぽいぞ。電車止まるかも」

そのタイミングで、リビングに置いてあった固定電話が鳴った。
母親からだった。

「え? うん、大丈夫。……え、そっち帰れないの?」
蓮が受話器を持ったまま振り返る。

「母さん、仕事先から戻れないって。
 凛人も帰れなさそうなら、泊まっていけってさ」

「え、いや……」

一瞬ためらった凛人だったが、
窓の外の豪雨を見て、さすがに苦笑する。

「……まあ、この雨じゃ無理か」

咲は小さく「そうですね」と頷きながら、
どこか少しだけ落ち着かない様子だった。



夜。

雨は止むどころか、さらに強くなっていた。

蓮は「俺先に寝るわ」とあくびをしながら自室へ戻り、
家の中は一気に静かになる。

凛人も客用の布団を借りて蓮の部屋に入ったが、
なかなか眠れなかった。

(……落ち着かねぇ)

同じ家の中に咲がいる。
それだけで、妙に意識してしまう自分に苦笑する。

喉が渇いて、そっと部屋を出た。

廊下を歩き、リビングのドアを開ける。

薄暗い室内に、小さな明かり。

ソファの端に、咲が座っていた。
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