第9章 『 高鳴るふたつの音 』
お土産コーナーには、ぬいぐるみやキーホルダーがぎっしり並んでいた。
「うわ、いっぱいありますね」
咲が楽しそうに棚を見ていく。その横で凛人は、ゆっくり後ろを歩きながらその様子を眺めていた。
ふと、咲の足が止まる。
視線の先にあったのは、小さなサメのぬいぐるみだった。
丸いフォルムなのに、どこか少しだけ鋭い目。
(……なんか、先輩に似てる)
そう思った瞬間、自分で少し恥ずかしくなり、誰にも聞こえないくらいの声でぽつりと呟く。
「……可愛い」
「ん?」
「な、なんでもないです」
慌てて別の棚へ視線を移す。
そのすぐあと、二匹セットのペンギンキーホルダーを見つけた。
「これ、双子に買ってきます」
「お、いいじゃん。絶対喜ぶ」
「ちょっとレジ行ってきますね」
咲がレジへ向かっていく背中を見送ってから、凛人はゆっくりとさっきの棚へ戻る。
すぐに、あのサメのぬいぐるみを見つけた。
(……これか)
手に取る。
(さっき『可愛い』って言ってたよな)
少しだけ迷ったあと、小さく息を吐く。
「……まあ、いいか」
そのまま別のレジへ向かい、こっそり会計を済ませた。
(あとで渡そう)
何でもない顔で店を出ると、ちょうど咲も戻ってきた。
「買えました」
「お、早いな」
ポケットの中にサメを隠したまま、二人は出口へ向かう。
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