第8章 『 余裕がなくなる音』
「……咲と行きたい」
その言葉が、帰り道の夜の空気の中で何度も頭に響く。
歩きながら、気を抜くとすぐ頬がゆるんでしまって、慌てて口元を押さえた。
(やばい……にやけてる……)
でも、抑えようとしても無理だった。
先輩が、自分から「一緒に行こう」って言ってくれた。
それだけで胸の奥がじんわり温かくなる。
少し前を歩く凛人の背中を見ながら、こっそり小さく笑う。
(……嬉しい)
誰にも聞こえないくらいの声で、そっとつぶやいた。
「……日曜日、楽しみだな」
そのまままた、隠しきれない笑顔になった。