• テキストサイズ

『はつこい』

第8章 『 余裕がなくなる音』


扉が閉まり、倉庫の中に静けさが戻る。

凛人はその場で数秒動かず、軽く顔を覆った。

「……はぁ」

小さく息を吐く。

(……名前、呼ばれただけだろ)

そう思いながらも、さっきの小さな声が頭の中で何度も繰り返される。

「……りん、と」

思い出した瞬間、もう一度大きく息を吐いた。

「……ずるいのは そっちだろ……」

軽く首の後ろをかき、気持ちを落ち着かせるように天井を見上げる。

「……ふぅ……いくか」

そう呟いて倉庫を出た瞬間。

少し離れた場所の壁にもたれて、腕を組んだ蓮がニヤニヤしながら立っていた。

目が合う。

「……」

「……」

数秒の沈黙。

蓮の口元がゆっくり上がる。

凛人は一瞬だけ目を細めて、先に口を開いた。

「……言うな。」

低く短い一言。

蓮は肩を震わせながら笑いをこらえる。

「いや、まだ何も言ってねぇよ」

「顔で分かる」

凛人は軽くため息をつき、タオルを肩にかけ直した。

「……練習戻るぞ」

そう言って歩き出す背中を見ながら、蓮は小さく呟く。

「はいはい、末期くん」
/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp