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『はつこい』

第7章 『 心が揺れる音 』




突然近くなった距離に、咲は息を呑んだ。

「……っ」

心臓の音が自分でも分かるほど大きくなり、頬が一気に熱くなる。
視線を上げられず、ただ小さく立ち尽くす。

(ち、近い……)

凛人はその赤くなった横顔を一瞬だけ見て、わずかに目を細めた。

(……本当は抱きしめたいけど……まだ我慢)

ゆっくりと体を離し、いつもの距離に戻る。

咲は突然近くなった距離に、未だに息を止めていた。

「え、あ……」

視線を上げた瞬間、目が合う。
逃げようと思ったのに、なぜか動けない。

頬が一気に熱くなる。

「だ、大丈夫です……!」

声まで少し上ずってしまう。

凛人はその反応を見て、ほんの少しだけ口元を緩めた。

「そんなに緊張すんな」

小さくそう言ってから、半歩だけ距離を戻す。
頭をぽんぽんってしながら

「次、決めてくる」

「……は、はい」

咲はまだ赤いまま、何度も小さく頷いた。

コートへ戻る凛人の背中を見送りながら、胸の鼓動はしばらく落ち着かなかった。


そんな二人を、少し離れた場所から見守る――ふたつの影。
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