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『はつこい』

第7章 『 心が揺れる音 』


BBQから数日後。
放課後の体育館には、ボールの音とバッシュの擦れる音が響いていた。

練習試合形式のメニューの途中、凛人のシュートが珍しく外れる。
続けてもう一本――リングに弾かれた。

「……っ」

軽く舌打ちをして、凛人は一度ボールを床に落とす。
普段なら決めている距離だった。

「一回水飲んでこいー」
蓮に声をかけられ、凛人は小さく頷いてコートの外へ出る。

壁際に置いたタオルを取って、汗を拭く。
呼吸を整えようとしても、なぜか少しだけ感覚がずれていた。

(珍しいな……)

そう思ったとき、横から小さな声が聞こえた。

「……先輩」

振り向くと、ボールを抱えた咲が少しだけ遠慮気味に立っている。

「どうした?」

「さっき、ちょっとだけ……調子悪そうに見えて」

凛人は少し苦笑する。

「まあ、たまにある」

「でも」

咲は一歩だけ近づいて、少しだけ視線を上げた。

「……先輩、かっこいいから大丈夫です」

凛人が目を瞬かせる。

「負けないです」

まっすぐ言われて、数秒言葉が出ない。

(…あの時の、あの言葉…)
(……また救われた。)

コート脇、わずかな物音だけが響く静かな瞬間。


凛人は一歩近づき、咲の横に立つ。
そして、少しかがむようにして、そっと耳元へ顔を寄せた。

「……ありがとな。」

低く落ち着いた声が、すぐ近くで聞こえる。

(……今も……あの時も……)

言葉には出さないまま、胸の奥で静かに続ける。

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