第7章 『 心が揺れる音 』
最近、少しだけ変わったことがある。
特別な出来事があったわけじゃない。
告白されたわけでも、何か約束をしたわけでもない。
ただ――
「岩田妹〜」
そう呼ばれて振り向くたび、
気づけば、先輩の隣に立っていることが増えた。
バスケ部の集まりでも、廊下ですれ違うときでも、
なぜか自然に、同じ場所にいる。
今日も、みんなで話していたはずなのに、
いつの間にか先輩が隣にいて、
飲み物を手渡されていた。
「ほら、ちゃんと飲めよ。暑いだろ」
「……ありがとうございます」
何気ない一言。
それだけなのに、胸の奥が少しだけくすぐったくなる。
(最近、先輩……ちょっと近い)
そう思うたび、心臓が小さく跳ねる。
はじめてのことが、少しずつ増えていて、正直よく分からない。
でも、不思議と嫌じゃない。
むしろ――
(……なんで、ちょっと嬉しいんだろ)
自分でも理由が分からないまま、
私はまた、無意識に先輩の姿を目で探していた。