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『はつこい』

第6章 『 確信になる音 』


《 3年生教室トーク 》

昼休み、いつものように双子と教室で話していたときだった。

「そういえばさ」

何気なく、朝見た夢のことを思い出す。

「中学の頃、バスケ辞めようか悩んでた時に、公園で小学生に声かけられたことあってさ」

「へぇ、なにそれ青春じゃん」

軽く笑いながら聞いていた蓮が、ふと何か思い出したように顔を上げた。

「あ、そういえば昔、咲も言ってなかった?」

「ん?」

「“公園にバスケ上手なお兄さんいた!でも元気なかった”って」

もう一人も「あー」と頷く。

「あったね〜。人見知りで自分から話しに行かないのに、珍しいなーって思って覚えてる」

その言葉に、胸の奥が小さく揺れた。

公園。
小学生。
自分から話しかけた。

条件が、ゆっくりと重なっていく。

双子が少しニヤッと笑う。

「……まさかさ、凛人の夢の話の子って、咲じゃね?」

その一言で、止まっていた記憶が一気に繋がった気がした。

ランドセル。
まっすぐな声。
迷いなく笑った、あの表情。

頭の中に浮かんだ姿と、今の咲の笑顔が、静かに重なる。
あの、初めて名前を呼んだ時の笑顔。

「……そっか」

小さく息を吐く。

(なんだ、俺――)

(あの頃から、惹かれていたんだ。)

ずっと理由が分からなかった。
気づけば目で追っていて、
話しかけられるだけで少し嬉しくて、
誰かと楽しそうにしていると、なぜか胸がざわつく。

ただ“気になっている”だけだと思っていた。

でも、違う。

ずっと前から、もう始まっていたんだ。

ふと窓の外を見ると、廊下を歩く咲の姿が目に入る。
友達と笑いながら話している、いつもの表情。

その姿を見ているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。

同時に、少しだけ、落ち着かない感情も混ざる。

(……取られたくないな)

小さくそう思った瞬間、自分でも少しだけ驚いて、苦笑した。

(ほんと、分かりやすいな俺)

視線を逸らしながら、静かに思う。

(もう、“気になってる”じゃない)

(俺――)

(咲のこと、好きになってる。)
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