第6章 『 確信になる音 』
「お兄さん、元気ない?」
不意にかけられた声に、ドリブルを止めて振り向いた。
そこには、ランドセルを背負った小さな女の子が立っていた。
息を少し切らしながら、それでも真っ直ぐこっちを見ている。
「ん? 別に。疲れただけ」
そう答えると、女の子は少しだけ眉を下げて、何かを考えるように口を閉じた。
それから、ぱっと顔を上げて笑う。
「大丈夫! お兄さんかっこいいもん!負けないよ!」
迷いのない声だった。
根拠なんて何もないはずなのに、
その言葉だけが、不思議なくらい真っ直ぐ胸に落ちてくる。
さっきまで、何度シュートを打っても入らなくて、
もうやめてもいいかな、なんて本気で思っていたのに。
「……かっこいい、ね」
思わず小さく笑うと、女の子は満足そうにうんうんと頷いた。
「うん! だって、いっぱい頑張ってたもん!」
その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
見ていたのか、と思った。
誰も見ていないと思っていた時間を、
ちゃんと見ていた人がいたのかと思った。
「……ありがと」
小さくそう呟いて、もう一度ボールをつく。
さっきまで重かったはずの音が、少しだけ軽く響いた。
もう一回だけ。
もう一回だけやってみよう。
そう思えたのは、きっと――
そこで、ふいに風が吹いた。
女の子の髪が揺れて、
その顔が、はっきり見えそうになって――