第4章 『近づく恋の音』
《 3年生教室トーク 》
昼休み、教室の後ろの席に座った瞬間、目の前に蓮がどさっと椅子を引いて座った。
「昨日さ」
その一言で、嫌な予感がする。
「咲の飯、どうだった?」
「……普通」
わざと短く返すと、蓮はすぐにニヤけた。
「“普通”の顔じゃなかったけど?」
「もう一回食いに来てもいい?とか言ってたよね」
隣に座ったもう一人の双子まで話に乗ってくる。
「お前ら、いちいち言わなくていいだろ」
パンの袋を開けながら返すと、二人は顔を見合わせて笑った。
「いや、だって珍しいじゃん」
「凛人が“また行く”とか言うの」
「蓮の家だからだろ」
そう言うと、蓮が机に肘をついてこっちを覗き込む。
「で?」
「なに」
「咲のこと、どう思ってんの」
核心に近い聞き方に、少しだけ眉を寄せる。
「別に、普通」
「はい出た」
双子が同時に笑う。
「昨日さ、キッチンでずっと後ろ立って見てたの、普通って言わないからね?」
「距離近かったし」
「手伝うかって聞いただけだろ」
「で、結局手伝ってないし」
「ただ見てただけだし」
言い返そうとして、言葉が止まる。
確かに、手伝うって言ったのに、結局ほとんど何もしていない。
蓮が少しだけ真面目な顔で言った。
「まあ、からかいは置いといて」
「……なんだよ」
「もし誰かが咲にちょっかい出してきたらどうする?」
その質問に、ほぼ反射で答えていた。
「普通に止めるだろ」
「ほら」
双子がすぐに吹き出す。
「今の完全に牽制じゃん」
「“手出すなよ”って顔してたぞ」
「してねえ」
「してたしてた」
蓮は笑いながら続けた。
「安心しろって。別にすぐ誰かに取られるタイプじゃないけどさ」
「……別に、取られるとかそういう話じゃない」
小さくそう言うと、二人はまた顔を見合わせた。
「はいはい」
「もうそれでいいよ」
からかう声に小さく息を吐いて、窓の外に視線を向ける。
グラウンドの端に、小さく見慣れた姿が見えた。
「……まあ」
無意識に口から漏れる。
「変なやつに絡まれるのは、普通に嫌だろ」
その一言に、双子が同時にニヤッとした。
「はい確定」
「 " 普通 " ね!」
「うるさい」