第4章 『近づく恋の音』
――数十分後。
テーブルに料理を並べると、蓮が大げさに手を合わせた。
「いただきます。咲シェフの本気メシ」
「普通のご飯だよ」
少し緊張しながら凛人の反応を待つと、一口食べてすぐに視線が上がった。
「うまい」
シンプルな一言なのに、それだけで胸の奥がふわっと軽くなる。
双子がすぐに茶化した。
「成瀬、点数は?」
「彼女候補的にどうですか?」
「お前ら黙って食え」
軽く小突きながら言ったあと、凛人はもう一度箸を動かし、何気ない声で続けた。
「また食いに来てもいい?」
突然の言葉に、一瞬だけ言葉が出なくなる。
「……はい。いつでも」
小さく答えると、双子が同時に「おー」と声を上げた。
「はい出ました常連宣言」
「もう家族じゃん」
「そこは、"俺だけに"とか言えよー」
「れんにぃ!!」
「違うから!」
笑い声に包まれる中、凛人だけが少しだけ静かな声で言った。
「次来るとき、なんか甘いの買ってくる」
その何気ない約束が、思った以上に嬉しくて――
咲は気づかれないように、少しだけ笑った。