第4章 『近づく恋の音』
「ただいまー」
玄関のドアを開けた瞬間、リビングの方から笑い声が聞こえた。
(あれ…?)
靴を脱いで中に入ると、ソファに座ってゲームをしている蓮と――その隣に、見慣れた後ろ姿。
「え……先輩?」
振り向いた凛人が、少しだけ驚いた顔をしてから笑った。
「おかえり」
その一言だけなのに、なぜか家の空気が急に落ち着かなくなる。
蓮がニヤッと笑った。
「今日、オフだから呼んだ。どうせ暇だろって」
「勝手に人を暇扱いすんな」
そう言いながらも、凛人はどこか居心地よさそうに笑っている。
桜もキッチンから顔を出した。
「咲、おかえり〜 材料買ってきた?今日、料理当番だよね?」
「うん…買ってきたよー!」
「成瀬、夕飯食べて行くって〜」
「えっ!」
思わず声を上げると、双子は同時にニヤニヤした。
「いいじゃん、家庭的アピールチャンス」
「手料理イベントってやつ?」
「もう、からかわないで!」
恥ずかしさをごまかすようにキッチンへ逃げ込むと、後ろから足音が近づいてきた。
「手伝う?」
振り向くと、凛人が少しだけ距離を詰めて立っていた。
学校より近い距離に、思わず視線が泳ぐ。
「だ、大丈夫です。簡単なものなので…」
「そ」
短く答えながらも、しばらくそのままキッチンのカウンターにもたれて見ている。
リビングからすぐ見える距離なのに、家の中だからか、妙に二人きりみたいな感覚になる。
小さく息を整えていると、凛人が少しだけ声を落とした。
「家だとさ」
「はい?」
「なんか、距離近く感じるな」
その言葉に、手元の包丁を持つ手が一瞬止まる。
「き、気のせいじゃないですか…?」
「いや。学校より、普通に話せる」
ふっと笑われて、顔が熱くなる。
そのタイミングを狙ったように、後ろから双子の声。
「ねえまだー?イチャイチャしてないで飯ー!」
「キッチン狭いんだけどー?」
「してない!」
思わず振り返って言い返すと、リビングから爆笑が返ってきた。
凛人も肩を揺らして笑う。
「バレてるな」
「だから違いますって…!」