• テキストサイズ

『はつこい』

第4章 『近づく恋の音』


― バスケ部・休憩中

体育館にボールの弾む音が響く中、休憩の笛が鳴り、部員たちはそれぞれ壁際に集まっていった。

咲は双子の隣に座り込み、タオルで首元の汗を拭きながら、小さく息を整える。
まだ少し心臓が速い。

「今日、外寒くなかった?」
桜がペットボトルを開けながら言った。

「朝やばかったよな」
蓮も同意するように笑う。

「でも体育館の中、暑すぎる…」

咲がそう言ったとき、近くにいた男子部員が笑った。

「岩田妹、もう顔真っ赤じゃん」

「この子、昔からちょっと動くと赤くなるからねー」

桜が頬をツンツンってしながら言う
その直後。
少し後ろから、落ち着いた声が聞こえた。

「そりゃ、あれだけ走ってたしな」

振り向くと、凛人が立っていた。
タオルを肩にかけたまま、いつも通りの静かな表情でこちらを見ている。

「凛人、今までどこいた?」
蓮が聞く。

「先生に呼ばれてた」

短く答えて、凛人は自然な動きで輪の中に入り、
咲の少し横に腰を下ろした。

思っていたより、距離が近い。

そのことに気づいた瞬間、咲は無意識にペットボトルを持ち直した。

「ちゃんと水分取れよ。」

そう言って、凛人は軽く顎でボトルを示す。

「…取ってます」

「ならいいけど」

それだけ言って、凛人は前を向いた。
特別な会話でもないのに、なぜか胸の奥が少し落ち着かない。

「なーんか最近さ」

少し離れたところにいた部員が、ニヤっとしながら口を開いた。

「凛人、岩田妹の近く率高くね?」

「は?」

蓮がすぐ笑う。

「それな。俺も思ってた」

「別に」

凛人は表情を変えない。

「座る場所ここしか空いてなかっただけ」

「いや、普通に空いてたけど?」

桜がさらっと言い、周りから小さな笑いが漏れる。

咲は何も言えず、タオルをぎゅっと握った。
横に座る凛人は、小さく息を吐く。

「うるさい」

短くそう言いながらも、席を立つ様子はない。

次の練習開始の笛が鳴るまで、
その距離は、ずっと変わらなかった。

真っ赤な顔が治らないのは、走ったせいじゃない…
/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp