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『はつこい』

第3章 『気になる音』


《 リビングトーク 》

夕飯前のリビングは、テレビの音とエアコンの風でゆるく満たされていた。
床に座ってクッションを抱えながら、咲はスマホをいじっている。

ソファには双子。
蓮はだらっと背もたれにもたれ、桜はテーブルに肘をついていた。

「ねえ、咲」

先に口を開いたのは桜だった。

「今日の昼、購買行ったでしょ」

「……うん」

咲は顔を上げずに答える。

「誰と?」

「え?」

一瞬、手が止まった。

蓮が横から口を挟む。

「凛人と一緒だったよな〜」

「一緒っていうか……たまたま会って」

咲はクッションをぎゅっと抱き直す。

「クリームパン、だったっけ」

桜がにやっと笑う。

「……なんで知ってるの…」

蓮が楽しそうに言う。

「凛人、優しいべ?」

「………普通」

間があった。

桜はその“間”を見逃さない。

「普通、ねぇ~」

「ちょっと話しただけだよ…!」
「午後の体育、頑張れそうって思っただけ…」

そう言ってから、
咲は自分で言った言葉に気づいて少し黙った。

「ほら」

蓮が指を鳴らす。

「もう出てる」

「何が」

「気持ち」

「出てない」

咲はむぅーってして言い返す。

「だってさ」
「わざわざ並んで買ってきてくれたんでしょ」

「それは……人多かったから」

「理由つけるの上手いよな」
「凛人も」

蓮が笑う。

桜は少しだけ声のトーンを落とした。

「でもさ」
「咲、嫌じゃなかったでしょ?」

咲は、すぐに答えられなかった。
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