第13章 『 負けられない理由 』
「……待たせて、ごめんな。」
抱きしめたまま、
凛人が小さくそう言う。
胸に顔をうずめた咲は、
少しだけ首を振った。
「……幸せです……」
その一言に、
凛人の腕の力がほんの少し強くなる。
――やっと、言えた。
ずっと言いたくて、
でも簡単には言いたくなくて、
勝ってから伝えるって決めていた言葉。
「……これからは、もう待たせない」
そう呟いて、
凛人はそっと咲の頭に額を寄せる。
心臓の音が、まだ少し速い。
でもそれが、
さっきまでの緊張じゃなくて、
確かな安心に変わっているのを感じていた。
凛人は、まだ離れきらない距離のまま小さく笑う。
「……これからさ、咲の“初めて”の思い出、全部貰うから…」
少しだけ照れたように視線を逸らしてから、もう一度見つめ直す。
「俺、たぶん思ってるより独占欲強いから。
――覚悟しといて」
咲は一瞬きょとんとして、
すぐに顔を真っ赤にしながら小さくうなずく。
「……はい……」
少し迷ってから、
袖をそっとつかんで目を合わせた。
「……じゃあ、先輩も……
私の“初めて”の隣、ずっといてください」
そう言って恥ずかしそうに笑う。
凛人は一瞬言葉を失って、
小さく息を吐いた。
「……それ、反則」
重なった手の温度が、
少しずつ現実になっていく。
やっと届いた想い。
やっと始まった関係。
これは、まだ途中の物語。
――これから形になっていく、
ふたりの「初恋」。