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『はつこい』

第13章 『 負けられない理由 』


観客席がまだざわめいている。

最後のブザーの音と同時に、
ネットが揺れた瞬間――

時間が、止まった気がした。

「……先輩……」

さっきまでコートを必死に走っていた姿が、
今はチームメイトに囲まれていて、
それでも私の目には、先輩しか映らない。

胸の奥が、じんわり熱くなる。

「……このシュートだよ……」

小さく、誰にも聞こえない声でつぶやく。

「……私の、初恋……」

次の瞬間、
人の流れの向こうから、先輩がまっすぐこちらへ歩いてきた。

え、なんで――

そう思った瞬間、
目の前に立った先輩が、何も言わず手を差し出す。

「……行こ」

そのまま手を引かれ、
人の少ない通路まで連れて行かれる。

心臓の音が、うるさい。

先輩が ありがとう。って…
(こちらこそだよ…)

「……見てました」

少し息を整えてから、
私は先輩を見上げる。

「すごく、すごく……かっこよかったです」

自分でも驚くくらい、
まっすぐ言葉が出てきた。
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