第3章 怖いものなし
翌朝、小枯は布団から出て来なかった。
布団は小枯が蹲る形で盛り上がり、何なら細かく震えている。
…致命的だ。
鬼鮫は往生した。
まさかここまで怖がりだとは。
「小枯。日が昇ってもでる霊的はいません。いい加減起きなさい」
「黙れ。馬鹿な鬼鮫め。私は騙されないぞ。日が昇っても出るものは出る。お前は昼に昇る月を見たことがないのか」
「…それ、別に異常事態じゃありませんよ?」
「知ってるわ!そういう違和感を大事にしろと言ってるんだ!わからない奴だな!」
「ああ、それは失礼。全くわかりませんでした」
「ニュアンスが伝わらない相手に何を言っても無駄だ!大体なんだ、化けを3枚に下ろすって?4枚でも叩きでも?化けは鰺でも平目でも鮪でもない!化けは化け!それ以上でもそれ以下でもない!以上!!」
…深刻だ。かなり深刻だ。
「昨夜はそれで納得して寝付いてましたが、駄目ですかね、3枚下ろしは」
「駄目だ!大体食えないものを下ろしてどうする⁉意味がないだろ⁉」
「あなたが怖がらなくなるならそれでいいんじゃないですかね」
「駄目!それで復活されてみろ!ダメージが跳ね上がるだろ⁉やだやだやだやだ!私は天国にいきたい!行ってお釈迦様の膝にしがみついて化けに化かされない人生を送りたい!エバネバ化けなしの常しえを生きたい!」
「生きるも何もそれじゃあなたも化けの仲間入りですよ?あの世行きしてますからね」
「私は死なない!」
「それじゃゾンビか吸血鬼ですよ」
「止めろ!何てこと言うんだ⁉噂をすれば影が差すんだぞ⁉口を慎めこのジョーズ野郎!」
「私がジョーズならあなたは如雨露ですがいいんですか?時雨垂れ流しの小枯さん」
「誰が垂れ流しか!時雨垂れ流したら死ぬわ、文字通り!そんなんするか!」
「私だって無闇に人を襲いませんよ。まして食べたりしません」
「…あ、食べないんだ?」
「…あなた人を何だと思ってるんです?」
「ジョーズだよな?いや、温泉シャークか?」
「…上手いこと言った気になるんじゃありませんよ」
「上手いじゃないか。今のお前は正に温泉シャークだ…クク」
布団の震えが笑いの揺れに変わった。そうと察した鬼鮫が勢いよく掛布を剥ぎ取る。
「笑う余裕があるなら起きなさい。朝食前にひと風呂浴びるんでしょう?」
「いや、いい。また何か出ても困る」
