第3章 怖いものなし
小枯を寝床に下ろし、掛布を頭の上まですっぽり被せて鬼鮫は目だけで笑った。
「すぐ戻りますよ」
言った瞬間、掛布の下からバッと手が出て鬼鮫の外套を鷲掴みした。
「何処へ行く気だ!い、い今ひひひひとりにしたら自慢じゃないが多分死んでしまうぞ、私はァ!!」
「落ち着きなさい。落ち着いて生魚のことでも考えていなさい」
「…生魚…うぅ…」
呻いた小枯の手を宥めるように撫でて放し、鬼鮫はまたコトコトなる障子を振り向いた。
「ーさて。夜更かしの元に思い知らせてきますかね」
小枯の手が掛布に引っ込んだのを見届けて、鬼鮫は腰を上げた。そして何事もなげな様子で障子に歩み寄る。
白い障子紙を過ぎる黒い影。
人に似た何か。
鬼鮫は口角を上げて鮫肌の柄に手をかけた。
「こんな無粋な夜更かしは私の本意ではない。どうせ夜越しするなら、他にやりたいことがありますからね」
障子がカタカタカタ、カタンと鳴る。
鬼鮫は歯を向いて笑った。
「邪魔する気なら、3枚4枚じゃすみませんよ?」