第4章 例えるならば
「飽きる前になおす努力をしなさい。あなたの壊滅的な寝相を」
「無意識にやってることをどうやってなおせというんだ。なおせるものならなおしたいよ、私だって」
「四六時中考えてればいいんじゃないですかね。無意識下に植え付けたらいい」
「…お前は四六時中寝相のことしか考えていない奴といて何が楽しい?」
「楽しいですよ。弄り甲斐があって」
「弄られる身にもなってみろ。毎日毎日、寝相の話。寝相が私みたいじゃないか。どんな生き物だよ。ユーカリ食って毒の分解の為に寝てばっかのコアラか笹食って消化の為に寝てばっかのパンダじゃないぞ、私は」
「いいじゃないですか。コアラもパンダも理に適った生き方をしてますよ。あなたも見習いなさい」
「寝てばかりいたら寝相炸裂で本末転倒だ」
「起きていればいいんじゃないですかね」
「ああ、そうか。成る程な。寝なければいい訳だ。それなら出来そうだ」
「…何かスイッチを入れましたかね、私は」
「幸いもう削れることもないしな。そんなに寝る必要はないんだ」
「ちょっと待ちなさい」
「3日に一度くらい寝れば保つ。4時間も寝たら十分だな。寝過ぎか?キリンなんか2時間くらいしか寝ないしな。間をとって3時間でどうだ?それくらいなら寝相にも我慢出来るか?」
「…私はキリンよりコアラでパンダなあなたの方が好きです」
「私は珍獣か」
小枯は呆れ顔をしてふっと笑った。
まだ括り髪を離さない鬼鮫の手をぽんと叩いて、その顔を覗き込む。
「…あのな?」
「…今度は何です?」
「私は熱苦しくて目を奪われるような、寒々しくて目が離せないようなお前が好きだ」
「は?」
「いつか酒が入ったときにでもゆっくり話そう。素面じゃよくよく話し辛い…。ふ。私も妙なことを考えるようになったもんだ。はは」
おかしげに含み笑いした小枯を鬼鮫が眉を上げて訝った。
「気になりますねえ」
「気にしなくても、そのうち話すよ。多分話さずにいられないから」
私がお前を、どんな風に思っているか。
聞いて欲しい。
「そうですか。じゃあ買い物に行きましょう」
「は?」
「肴は何がいいですかね?あなたはほっとくと空酒を呑むから油断出来ない」
「ちょっと待て鬼鮫…」
「先ず酒屋に行きましょうか」
「え。待って待って。こっちにも心の準備というものが…」